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    お知らせ


     以下の他、新しいテーマもはじめました。
     更新をお待ちください。

    免疫学


    免疫系とは


     私たちは常日頃微生物に囲まれて生活しており、常に微生物に暴露されています。その中には感染症を引き起こすものも少なくありませんが、実際に私たちが疾患になることはまれです。これは私たちの生体内に免疫系という感染防御システムが備わっており、常に外界からの病原微生物の侵入を防いでいるためです。私たちはこの免疫系という感染防御システムのしくみを細胞レベル、分子レベルで解明することを目指しています。
     一方、この免疫系が本来無害な花粉や食物などに反応して生体に有害な影響を与える場合があります。これが過敏症やアレルギーです。私たちはその発症メカニズムの解明にも取り組んでいます。

    現在の研究


    ◯ CD69分子による免疫制御機構の解析
     CD69分子はリンパ球などの早期活性化マーカーとしてよく知られていますが、その機能はよくわかっていません。炎症巣に浸潤しているリンパ球に発現しており、炎症疾患の病態形成に関与している可能性があります。
     当研究室ではCD69ノックアウトマウスを用いて各種炎症誘導における役割を解析しています。これまでの研究でCD69ノックアウトマウスでは関節炎やアレルギー性喘息、腸炎などの発症が抑制され、これらの炎症の誘導にCD69分子が重要な役割を果たしていることがわかってきました。
     現在、CD69分子の実際の機能や他の炎症疾患での役割について研究を行っています。

    ◯ アレルギー性喘息(気道炎症)のバイオイメージング
     喘息などのI型アレルギー疾患はTh2細胞に依存した炎症疾患であり、好酸球などの浸潤を特徴としています。これまでTh2細胞は炎症誘導に重要であることはわかっていましたが、数の上では浸潤細胞の数パーセント程度であるため実際の炎症の場でどのような機能を果たしているのかほとんどわかっていませんでした。
     私たちのグループは世界で初めて喘息(気道炎症)のin vivoイメージングシステムの開発に成功し、炎症現場における役割を解析しています。これまでに肺に集積してきた抗原特異的Th2細胞が細胞集団を形成し、その後の好酸球浸潤や炎症巣の場所を制御していることを明らかにしてきました。
     現在、Th2細胞等の浸潤様式の解析や細胞集積に関与する分子の解析を行っています。



    細菌学


    研究の目的


     抗生物質の発見と発展によって感染症は過去のものだと言われた時代もありましたが、現代の我が国においても感染症は珍しいものでもなく、それで命を失う人も少なくありません。さらに近年幾つかの疾患についてその原因が細菌感染であることが解明され、感染症の科学はますます重要性が増しています。
     一方でヒトの全ゲノムがほぼ明らかとなった現代は、まさにゲノム生物学時代となりました。とりわけ微生物の分野ではゲノム解析が進んでおり、1995年のインフルエンザ菌の全ゲノム配列決定に始まって以来、医学細菌の全ゲノム配列が次々に明らかにされ、膨大なゲノム情報が蓄積されつつあります。
     これら遺伝情報は、従来の個別遺伝子の機能解析から全遺伝子情報を対象とした研究を可能にし、病原細菌の代謝についてもゲノム全体像を見てその菌の性質を予想するという新たな解析への展開を可能としました。今後は、こうした多くの遺伝子情報による細菌の生合成系や代謝系、固有の遺伝子機能をターゲットとした新治療薬開発への展開が期待されています。

    現在の研究


     肺炎は我が国の死因第5位である重要な感染症です。特に免疫機能が低下した高齢者等における肺炎は致死的なものになりやすいことが知られています。また、免疫機能が未発達な乳幼児では、肺炎球菌による敗血症や髄膜炎による後遺症が少なくない割合で起きています。
     肺炎の原因菌のうち約30%を占めるのが肺炎球菌です。そのため肺炎球菌の感染機構、特に生体内での感染巣の形成過程および免疫細胞による防衛機序を明らかにすることは、有効な肺炎治療法の開発に寄与し患者のQOL を高めることに繋がります。
     さらに近年、第一選択薬として用いられるβ-lactam 系の抗生物質に耐性の肺炎球菌が報告され治療が難しくなってきており、ワクチンを利用した肺炎予防が重要になっています。

    ◯ 肺炎球菌の生体内でのライブイメージング
     肺炎球菌のゲノム情報を基に、蛍光観察可能な遺伝子組換え肺炎球菌を作製し、マウス肺内部での動態を観察しています。同時に肺炎球菌排除に関わる免疫細胞の挙動も観察し、病原細菌と免疫細胞のリアルタイムでの相互作用を明らかにしようと試みています。
     今後はワクチン接種による動態変化についても観察し、ワクチン効果の細胞レベルでの解明を目指しています。

    今までの研究


     クラミジアは真核生物の細胞の中で封入体を形成し、その中でのみ増殖が可能な偏性細胞内寄生性細菌です。しかも宿主細胞のATPを直接取り込むことで自らの増殖に必要なエネルギーをまかなっていると考えられています("energy parasite"仮説)。臨床的には、クラミジアはさまざまな動物にさまざまな病気を引き起こし、中でもChlamydiaChlamydophila pneumoniae)はヒトの肺炎の原因菌として重要であるのみならず、最近では動脈硬化との関連が明らかとなり注目を浴びています。

    ◯ ゲノム塩基配列決定
     2000年に当研究室を中心としたグループが発表したC. pneumoniae日本株J138の全ゲノム塩基配列は、我が国で初めて決定された病原菌ゲノムです。

    ◯ ポスト・シークエンス解析
     いわゆるポスト・シークエンス解析として、DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析やtwo-hybrid systemを使ったタンパク質相互作用解析などを行っています。特に機能未知の遺伝子について病原性との関連を視野に入れて機能解析を行っています。

    ◯ 宿主病原体関連
     高等動物における感染防御の主役は免疫系であり、病原微生物の排除に重要な自然免疫の分子機構の解明が近年急速に進んでいます。クラミジア等の細胞内寄生細菌の排除にはマクロファージの殺菌作用が重要であり、NOを始めとする殺菌物質を誘導する分子メカニズムの解析は、感染防御機構の理解に役立つだけでなく、臨床応用においても非常に重要です。我々は現在、各種の遺伝子ノックアウトマウスを用い、マクロファージのNO産生におけるシグナル伝達機構の解析を進めています。また、獲得免疫応答を制御する中心的な細胞であるT細胞の分化にかかわるシグナル伝達についても研究を行っています。
     また、クラミジアに感染された細胞ではどんなことが起きているのか(細胞と病原体の繰り広げる攻防)を、DNAマイクロアレイを用いた宿主細胞の遺伝子発現解析による解析を行っています。


ヤマミィ03-B

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