細菌学

病原性細菌について
20世紀の後半、抗生物質の発見と発展によって多くの人の命が救われるようになりました。しかし抗菌薬に耐性の細菌が次々と出現し、それらが広まるにつれ、現行の抗菌薬による治療が効かない事例が増えてきました。現在、薬剤耐性菌の出現と拡散の早さに、抗菌薬の開発が追い付いておらず、事態は深刻です。
本研究室では、細菌の感染宿主内における生態の知られざる側面を解明することで、新たな治療法の開発を目指します。
細菌叢について
ヒトをはじめとする生物の体には、それぞれ固有の微生物群が生息しています(微生物叢)。そして、それらの微生物が宿主(ヒトや動植物)の健康に大きな影響を与えていることが分かってきました。本研究室では、微生物叢のなかでも特に細菌叢に焦点をあてて研究しています。
健康に有益な細菌、有害な細菌についての研究も行っていますが、本研究室では特に、「宿主が体内に大規模かつ多様な細菌を保有しているにもかかわらず、有害な事象が発生しないのは何故か?」についての研究に力を入れています。

免疫学

私たちは常日頃微生物に囲まれて生活しており、常に微生物に暴露されています。その中には感染症を引き起こすものも少なくありませんが、実際に私たちが疾患になることはまれです。これは私たちの生体内に免疫系という感染防御システムが備わっており、常に外界からの病原微生物の侵入を防いでいるためです。私たちはこの免疫系という感染防御システムのしくみを細胞レベル、分子レベルで解明することを目指しています。
一方、この免疫系が本来無害な花粉や食物などに反応して生体に有害な影響を与える場合があります。これが過敏症やアレルギーです。私たちはその発症メカニズムの解明にも取り組んでいます。
現在の研究
CD69分子による免疫制御機構の解析
CD69分子はリンパ球などの早期活性化マーカーとしてよく知られていますが、その機能はよくわかっていません。炎症巣に浸潤しているリンパ球に発現しており、炎症疾患の病態形成に関与している可能性があります。
当研究室ではCD69ノックアウトマウスを用いて各種炎症誘導における役割を解析しています。これまでの研究でCD69ノックアウトマウスでは関節炎やアレルギー性喘息、腸炎などの発症が抑制され、これらの炎症の誘導にCD69分子が重要な役割を果たしていることがわかってきました。
現在、CD69分子の実際の機能や他の炎症疾患での役割について研究を行っています。
アレルギー性喘息(気道炎症)のバイオイメージング
喘息などのI型アレルギー疾患はTh2細胞に依存した炎症疾患であり、好酸球などの浸潤を特徴としています。これまでTh2細胞は炎症誘導に重要であることはわかっていましたが、数の上では浸潤細胞の数パーセント程度であるため実際の炎症の場でどのような機能を果たしているのかほとんどわかっていませんでした。
私たちのグループは世界で初めて喘息(気道炎症)のin vivoイメージングシステムの開発に成功し、炎症現場における役割を解析しています。これまでに肺に集積してきた抗原特異的Th2細胞が細胞集団を形成し、その後の好酸球浸潤や炎症巣の場所を制御していることを明らかにしてきました。
現在、Th2細胞等の浸潤様式の解析や細胞集積に関与する分子の解析を行っています。
